夢の場所。


冬の現場の寒さは厳しい。
足元からしんしんと寒さが伝わって
指先の感覚がなくなる。
それでも私は現場が大好き。



さて。


20歳で初めて就職した会社はたまたま
西麻布にある小さな設計事務所の事務職だった。
絵を描くのが大好きだったから
当時手描きだった図面を見て衝撃と感動。
よしこれをやろう、と志が決まった。
それから
昼間は建設会社で働きながら
夜は建築の専門学校に通った。
仕事と勉強で遊ぶ時間はぜんぜんナイ。
毎月分割で学費を払っていていつもお金がナイ。
ないないづくしの生活の中
唯一あるのは
建築をやりたいという夢と希望だけ。


26歳で建築士試験に合格。
28歳で第一子出産。
31歳で第二子出産。
32歳でインテリアコーディネーター合格。

その間は子育てをしながら
それはそれはいろんな仕事をした。
住宅展示場の受付でもモデルルームの設営でもCADオペでも
下請けの図面描きでも物販コーディネーターでも
見栄も恥もかなぐり捨てて
建築とインテリアに関係のある仕事ならもうなんでもやった。
すべての経験が
その後の仕事の血となり肉となった。


ふりかえってみると私は
なかなかもってパワフルな女だなーと思う(笑)
でも悲壮感はまったくなかった。
それはなぜか。

ただ仕事が楽しかったから。
ただ建築が好きだったから。

好きなことを仕事にできるということ。
それは何にもかえがたい幸せなこと。
だから現場は
どんなに寒くても過酷でも殺風景でも
求め続けた私の夢の場所なのです。